翻訳

どうやったら翻訳者になれるんですか?

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「お仕事は何をされているんですか?」

と聞かれたら正直に答えるしかないので答えるのだが、基本的に自分から仕事の話をすることはない。色々と答えるのが面倒な質問が来るからだ。企業に勤めているなら職種を言って、さらに会社名まで探られたら、それを答えればいいんだろうけれど、自宅SOHOの場合は時々根掘り葉掘り興味本位で色々と聞かれてしまうことがある。

それだけならいいのだが、特に

「私も翻訳者になりたいと思ってるんですけど、どうしたら翻訳者になれるんですか?」と聞かれることが割とある。これにもパターンがあって、割と本気なパターンから、「とは言っても私は専業主婦で働く必要がないので、別に本気で考えてないし」というマウンティングの場合もあるので、その見極めが難しい。

本気で考えている人の中には、「ボクはいま総合商社に勤めていて、親はこの会社に入ったことを泣いて喜んでくれているので退職すると伝えるのは辛いのだけど、ボクとしては本気でノマドで翻訳者として生きていくのが夢なんです」と語る人もいて(それは全力で会社に留まることを勧めたよ、もちろん)、一概には言えないけど、一言で言えば

「どうやったら翻訳者になれるか、と人に聞いている人はその時点で無理」

である。翻訳には分野があるので、例えば文芸翻訳においては、この質問は特に問題ないかもしれないし、それをプロに聞きたいという気持ちは痛いほどよくわかる。でも実務翻訳をSOHOでトライしたいという人には完全アウトの質問である。

なぜならば、翻訳者の仕事の全ては自分一人で解決しなければならない、つまりすべての情報は自分でどこからか取ってくるしかなくて、それが基本的スキルの大前提なので、その質問をしてくる時点で「そのスキルはない」ということがわかってしまうからである。

ネットで検索すれば、そういう情報は山ほどあるし、書籍も大量に出ている。その公開情報すら読んでない人が本気でそういう質問をしてくるとは思えないので、こちらとしても本気で答える時間が無駄だなと思ってしまうけれど、軽くあしらうのも人間としてどうかと思うので、毎回かなり返答に困ってしまう。そして

「え?翻訳の仕事なんて今後AIにとってかわられるのでやめたほうがいいよ、私もそろそろ鞍替えしようかと思ってるし」

と答えることにしている。ほぼ本気だけど(笑)。